効果のアヤシイ魚道のあるダム

1997年に沙流川に完成した二風谷ダムには、「スイングシュート式魚道」が設置され、
「自然にやさしい魚道のあるダム」として宣伝されています。
この魚道は、延長約180m、落差約15mで、サクラマスを想定して設計されています。
ダム建設費約760億円のうち、魚道の設置にかかった費用は、約80億円です。
二風谷ダムの魚道の効果を検証するため、開発局から依託を受けた、
北海道栽培漁業振興公社が、実態調査を続けています。

この実態調査では、二風谷ダムの魚道を遡上するサクラマスの数は、
年間4〜13尾であり、平均6.1尾であることが示されています。
※二風谷ダム上流では、開発局と栽培漁業振興公社が、毎年1万〜数万尾のサクラマスのスモルト(降海型の稚魚)を
放流しています。
●北海道漁業振興公社と北海道開発局による魚道の評価
この調査結果について、北海道栽培漁業振興公社の沼田慎司氏は、「魚道での採捕数は、少ないながらも安定して推移しており、減少傾向はみられない」と評価しています。
(北海道栽培漁業振興公社『育てる漁業』No.361)
2008年の第169回国会参議院質議では、二風谷ダムの魚道の効果について、「北海道地方ダム等管理フォローアップ委員会(※)」が、「経年的に遡上していることから、魚道は有効に機能し、資源維持に大きな役割を果たしている」と評価していることが示されました。
そしてこのコメントが、開発局による「魚道の効果」の根拠であることが、政府答弁ではくり返し述べられています。
フォローアップ委員会の魚類専門家は、北海道栽培漁業振興公社の所属です。調査会社が行なった調査と評価に対して、その調査会社に所属する委員が「御墨付き」を与え、それがそのまま、開発局による「魚道の効果」の評価とされている実態が、明らかになりました。
(2008年6月 第169回国会 参議院 紙智子議員による質議)
※「ダム等管理フォローアップ委員会」は、国土交通省が管理するダムについて、調査分析を客観的に行ない、ダムの効率性・実施過程の透明化を向上させることを目的として、1996年より開催されているものです。
◇北海道地方ダム等フォローアップ委員会メンバー(敬称略)
新谷融(北大名誉教授)、伊藤宏司(北大名誉教授)、
井上聡(北海道栽培漁業振興公社)、門崎允昭(北海道野生動物研究所)、
黒木幹男(北大工学科准教授)、
越塚宗孝(札幌国際大観光学科教授)、中井和子(中井景観デザイン研究所)、
松井佳彦(北大工学科教授)
*開発局が開催する「流域委員会」「調査委員会」等で、よく見かけるお名前ばかりです。
計画策定や調査の直接の当事者であり、これではとても「客観性」「透明化」は期待できないでしょう。
●沙流川のアイヌ文化環境調査による魚道の評価
沙流川では、「二風谷ダムの違法判決」を受け、「アイヌ文化環境保全対策調査」が、平取ダムの建設に先立って、2003年度より行なわれています。
この調査報告書(2006年平取町)では、二風谷ダムの魚道の効果について、以下のように、きわめて厳しい指摘がされ、改善が求められています。
「幾尾かのマスが遡上しているというだけではなく、量的に確保されることが必要」、「アイヌ文化にとって欠かすことのできない魚を、このまま遡上させないでおくことが妥当なのか、真剣な議論が必要」、「必要に応じてよりよい魚道の整備を強く求めます」
また、この調査では、二風谷ダムの着工前後で、沙流川に生息する魚種が大きく減少したことが示されました。

激減した沙流川の魚種と、ずっしりと厚みのある『アイヌ文化環境保全対策調査 総括報告書』(2006年 平取町)
●下川町での藤間教授の講演
2008年9月13日、下川町バスセンターにて、「サンルダム建設に関する講演会」が開催されました(主催:サンルダム建設と町の活性化を図る会)。
講演を行なった藤間聡氏(室蘭工大教授)は、講演の冒頭で二風谷ダムとその魚道について触れ、「私は沙流川流域委員会の委員長をつとめた。昨日、二風谷ダムに海外からの留学生を案内したところ、ダムに立派な魚道をつけ、環境にこれほど配慮していることに、留学生たちは大いに感心していた」と、約100名の参加者の前で、留学生の言葉として絶賛しました。

下川町の集会で、
二風谷ダムの魚道を絶賛する藤間教授(室蘭工大)
しかし、二風谷ダムの魚道の実態は、今まで見てきたとおりです。二風谷ダムを訪れた留学生の皆さん、そして講演を聴いた下川町の皆さんが、「正しい科学」を学ぶことができたのか、少しばかり気になるところです。
◆藤間教授の講演の本題である、「ダム、堤防に頼らない治水対策」(稚内市クサンル川の事例)は、たいへん興味深いものでした。




